二国間で社会保障協定を締結することにより、年金制度等の二重加入を防止するとともに、外国の年金制度の加入期間を取り入れ年金が受けられるようにするものを「社会保障協定」
日独社会保障協定
平成12年(2000年)2月1日発効
● 協定の特徴
○日本とドイツの両国の年金制度への二重加入を防止。
○日本とドイツの両国の年金加入期間を通算し年金保険料の掛け捨てを防止。
● 年金制度への二重加入の防止
■ 基本的な考え方
日本の事業所に勤務する人などが、ドイツにある支店や駐在員事務所などに派遣される場合、両国の年金制度に二重に加入しなければならないことがあったが、協定により、いずれか一方の年金制度のみに加入することになった。
協定の対象者は、原則として、その人が就労している国の年金制度のみに加入する。ただし、事業所から一時的(5年程度が目安)に協定相手国に派遣される人は、引き続き派遣元の国の年金制度のみに加入する。例えば、日本の事業所からドイツに派遣される人は、原則としてドイツの年金制度のみに加入することになるが、派遣期間が一時的であれば、引き続き日本の年金制度のみに加入することになる。
■ 加入する年金制度
日本からドイツへ行き就労する人が加入する年金制度は、ドイツでの就労状況や就労期間により以下のようになる。なお、ドイツから日本に来る人の場合も同様の考え方になる。
@日本の事業所からの派遣 一時派遣(5年程度が目安) 日本年金制度
A上記派遣者の派遣期間が5年を超えた場合 原則、ドイツ年金制度
★申請により認められれば、日本年金制度(最長8年まで)
Bドイツでの現地採用 ドイツ年金制度
上記の考え方は、事業所で就労する人だけでなく自営業者にも当てはまる。例えば、日本の自営業者が一時的に同じ業種の自営活動をドイツで行うのであれば、引き続き日本の年金制度に加入することになるが、長期的にドイツで自営活動を行う場合はドイツ年金制度に加入することになる。また、日本で自営業をしていない人がドイツではじめて自営活動を行う場合は、ドイツの年金制度に加入することになる。
日本の年金制度に継続して加入し、ドイツの年金制度への加入を免除されるためには、日本の年金制度の対象者であることを証明する「適用証明書」の交付を社会保険事務所から受ける必要がある。
なお、この「適用証明書」の交付を受けるためには、以下の条件を全て満たす必要がある。
日本の年金制度の加入対象者であること
日本の事業所との雇用関係が継続していること(自営業者については、ドイツでも引き続き同種の自営活動を行うこと)
派遣期間が一時的(5年程度が目安)であること(自営業者については、就労期間が一時的であること)
※ 「雇用関係が継続している」とは、日本の事業主に役務を提供し、その事業主が労務管理をしていることをいいる。
■ ドイツの年金制度への任意加入
日本に居住する日本人で、ドイツの年金制度に5年以上の加入期間がある人は、将来受けるドイツ年金の年金額を増額させることを目的として、ドイツの年金制度に任意加入することができる。
任意加入の申請は、本来は、直接ドイツの年金担当窓口に行うことになっているが、日本の社会保険事務所を経由して申請することも可能である。
● 年金加入期間の通算
■ 基本的な考え方
年金を受けるためには、一定の期間年金制度に加入して年金保険料を納めなければならないという期間要件が日独両国ともに定められている。ところが、いずれかの国の年金制度に一時的に加入した場合などは、加入期間が短いために年金を受けられず、納めた年金保険料が掛け捨てになってしまうことがあった。
※ 日本の年金加入期間(21年)は日本の老齢年金の期間要件(25年)を満たさないので、日本の老齢年金を受給できない。
一方、ドイツの年金加入期間(4年)はドイツの老齢年金の期間要件(5年)を満たさないので、ドイツの老齢年金を受給できない。
しかしながら、協定により、日本とドイツの年金加入期間を相互に通算することで、年金受給権を獲得できるようになった。
年金加入期間の通算とは、両国の年金加入期間をまとめて一方の国から年金を受けるという仕組みではなく、それぞれの国で年金受給権を得るための期間要件を判断する場合に相手国の年金加入期間を通算するという仕組みである。したがって、年金を受けるときには、日独両国の年金制度に加入した期間に応じた年金を、それぞれの国から受けることになる。
※ 日本の年金加入期間(21年)は日本の老齢年金の期間要件(25年)を満たさないが、ドイツの年金加入期間を通算すると25年以上になるので、日本の老齢年金を受給できる。
一方、ドイツの年金加入期間(4年)はドイツの老齢年金の期間要件(5年)を満たさないが、日本の年金加入期間を通算すると5年以上になるので、ドイツの老齢年金を受給できる。
なお、日独両国の年金制度に二重加入していた期間は二重に通算されることはない。
※ 日独両国の年金制度に二重に加入していた3年間を2回数えて6年分として取り扱うのではなく、二重加入の3年間はあくまで3年間(合計22年)として取り扱う。
したがって、このケースでは、日本の老齢年金の期間要件(25年)は満たせないが、ドイツの老齢年金の期間要件(5年)は満たせるので、ドイツの老齢年金のみ受給できる。
■ 日本の年金にドイツの年金加入期間を通算する場合の取扱い
年金加入期間の通算の仕組み
ドイツの年金加入期間を通算して日本の年金を受ける場合には、ドイツの年金加入期間を日本の年金制度に加入していたものとみなして取り扱いる。
具体的な通算の仕組みは以下のとおりである。
老齢年金の場合・ 加入期間が25年以上必要という条件(期間要件)を満たしているかを判断するときに、ドイツの年金加入期間を通算できる。
障害・遺族年金の場合 a) 被保険者期間のうち保険料納付済期間と保険料免除期間(保険料が未納でない期間)とを合算した期間が3分の2以上必要という条件(納付要件)を満たしているかを判断するときに、ドイツの年金加入期間を通算できる。
b) 初診日又は死亡日に日本の年金制度に加入していなければならないという条件(加入中要件)を満たしているかを判断するときに、ドイツの年金加入期間を日本の年金制度に加入していたものとみなして判断しる。
この他にも、厚生年金保険制度の加入期間が20年以上ある人に65歳未満の被扶養配偶者がいると老齢年金に加給年金額が加算される場合があるが、このような加算を受ける場合にもドイツの年金加入期間を通算できる。
年金加入期間の通算による年金額
協定に基づいて、ドイツの年金加入期間を通算して期間要件等を満たした年金については、日本の年金制度の保険料を納めた実績に応じて年金額が決まる。
具体的な年金額の計算の考え方は以下のとおりである。
年金加入期間に応じて額が決まる年金
a) 老齢基礎年金、老齢厚生年金、遺族厚生年金などが該当しる。
b) 日本の年金加入期間に応じて年金額が決まる。
年金加入期間にかかわらず一定の額が決まる年金
a) 障害基礎年金、遺族基礎年金などが該当しる。
b) 日本とドイツとの年金加入期間の比率に応じて年金額が決まる。
年金加入期間が一定期間以下でも期間をかさ上げして額が決まる年金
a) 障害厚生年金、遺族厚生年金(加入期間が300月未満の場合)などが該当しる。
b) かさ上げした期間の割合と日本とドイツとの年金加入期間の比率に応じて年金額が決まる。
年金加入期間が一定期間以上の場合に一定の額が決まる年金
a) 老齢厚生年金の加給年金額などが該当しる。
b) 日本の年金加入期間と本来必要な期間との比率に応じて年金額が決まる。
■ ドイツの年金に日本の年金加入期間を通算する場合の取扱い
日本の年金加入期間を通算してドイツの年金を受ける場合には、日本の年金加入期間を、ドイツの年金制度に加入していたものとみなして取り扱いる。
なお、ドイツの年金制度に関する詳細は、ドイツの年金担当窓口に直接お問い合わせを。
■ 日本及びドイツの年金を請求する場合の取扱い
日本に在住している人がドイツの年金を請求する場合や、ドイツに在住している人が日本の年金を請求する場合は、それぞれ直接相手国の年金担当窓口に申請する必要があったが、協定により、居住国の年金担当窓口で相手国の年金を申請することが可能になった。